両面宿儺(りょうめんすくな)の正体

 ここでは、両面宿儺、ホルス、マモンの伝説派生元が同一であるという筆者の推測を述べるが、記録の殆どが消失しているため、推測の域を出ないことを最初に断っておこう。

 先ずは、伝承される者達をそれぞれ簡単に解説しよう。(諸説あり)


●両面宿儺

 両面宿儺は岐阜縁北部に伝わる怪盗である。身長約180cm、顔は2つ、手と足はそれぞれ4本ある姿をしており、、八幡さまのお告げを聞いた波根子武振熊によって、出羽ガ平の洞窟で首を斬り落とされたと伝えられる。また、毒蛇(龍)を退治した英雄的な逸話もある。


●ホルス

 ホルスはエジプト神話に登場する神である。ラーの子供である太陽神ホルスとオシリスとイシスの子である天空神ホルスが同名同格であることから、太陽神ホルスと天空神ホルスが習合視されるようになり、更に、さまざまと習合された習合神である。太陽の目と月の目を持つ鷹の姿で描写される場合と頭が鷹で胴体は人間の姿で描写される場合がある。また、父の仇であるセトを打ち倒しエジプト王になったと伝えられる。

 (ホルス神)


●マモン

 マモンはマタイによる福音書などに登場する、不正な財や富から派生した強欲を司るデーモン王である。15世紀頃までのグリモワール(魔術書)では、頭が二つの鳥で胴体は人間の姿をしており、バジリスク(蛇の王とされ猛毒を持つ)のような幻獣と併せて描写されていたが、次第に描写される姿は変化していった。

(15世紀頃のマモン)


〇推測

 物語を省略して伝達する先人たちの文化は世界各地に見られ、その手法を省略暗号化という。その手法を踏まえ〔宿〕と〔儺〕それぞれの漢字の意味を紐解くと、宿は星座や星宿の意味を持ち、儺は術師が4個の黄金の目玉が付いた面をかぶり、疫鬼を追い払うことから派生した、鬼払いの意味を持つ。
 であるから、両面宿儺は名前ではなく【二面性のある術師が、星に関する面を付けて、鬼を追い払ったような物語】を省略することで派生した最短省略文であろう。
 
 そして、星と4個の黄金の目玉は、太陽神の太陽の目と天空神の月の目と同一であると推測できる。また、強盗は不正な財や富を意味するので、マモン伝説にも類似していると言える。
 加えて、マモンの頭は二神一体の神であるホルスの頭と似ているので、マモンはホルスから派生したデーモンであるとの一説がある。更に、マモンと一緒に描写されている幻獣が、蛇もしくは龍に関係するならば、両面宿儺の蛇(龍)退治の逸話とも共通点が見られることになる。

 これらの共通性から、それぞれの伝説派生元は同一であると推測できる。エジプト神話がシルクロードなどを経由して伝達される内に、少しずつ内容が湾曲して各地に広まったのだろう。


☆あとがき

 あくまでも筆者の憶測であるが、岐阜県高山市位山のピラミッド伝説は広く知られているので、日本が大陸と陸続きだった頃、日本神話がエジプトに伝わり、日本が大陸と分断されることにより、エジプトに伝わっていた日本神話が、エジプト神話として日本に逆輸入され、現在の伝説に至る可能性もあるのではないだろうか?
 物語が湾曲を繰り返しながら各地に広まり、最初の物語とは違う内容の新しい物語として帰ってくることは、物語が沢山のロマンスを経由しながら伝えられた結果であり、人間の想像力が成せる技の賜物である。


★おまけ

 両面宿儺の呪いが原因だろうか?文政9年(1826年)品川沖で、顔は2つ、手と足はそれぞれ4本ある異児が発見された。その後、異児がどうなったか不明である。

         (国会図書館蔵・兎園小説より)

参考 ウィキペディア

前世滝沢馬琴

2022年08月16日